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第16回
アセトンとISO
アセトン:CH3COCH3の構造式で示されケトン基(-C=O)という官能基をもつ有機化合物。有機溶媒として広く用いられており身近なところではマニキュアの除光液、接着剤や塗料の溶剤に使われている。

突然化学物質の話から始め申し訳ございません。
ところでアセトンの臭いイメージできましたか? イメージできれば、本題にもどりましょう。

実は、建材由来の臭気の評価を国際標準化(ISO16000-28)しようとする活動がなされており、アセトンが臭気を評価する時の標準物質になるとの話を、東京大学生産技術研究所の加藤先生に8月末にお聞きしました。この試験方法は、少数のパネルの嗅覚を用い、定量的な方法で建材臭を評価するもので、知覚臭気強度を用いた方法だそうです。

もう少し正確にいうと、ある建材をパネルが嗅いだ後、あらかじめ色々な濃度で準備された参照ガス(アセトンガス+無臭空気)と比較し、参照ガスの知覚強度レベル(pi値)で建材臭の臭気強度を決めるものです。ここで、参照ガスの知覚強度レベルは0から15の16段階に設定されており、知覚強度レベル0はアセトン濃度が20mg/m3のもの、知覚強度レベル7はアセトン濃度が160mg/m3のもの、知覚強度レベル15はアセトン濃度が320mg/m3のものというように決められています。

例えば建物の床材をパネルが嗅ぐと知覚強度レベル7の参照ガスに近いとなれば、床材の臭気強度はpi7という評価になります。今回の標準化は居住空間の中の建物建材なのですが、居住空間は他にもたくさんあります。例えば自動車、電車、航空機、船舶・・・・いずれはこのような分野にもグローバルスタンダードが押し寄せてくるのでしょう。宇宙ステーションはどうなのでしょうか。
将来、住宅メーカーの宣伝に「○○ハウスはISO16000-28で決められたpi2の床材を使用しています。」などの表現が現われるかもしれません。こんな表現を目にしたら皆さんどう感じられますか?

「住宅の臭気が強すぎて困っているのですが、何か基準はないのですか?」と相談を受けますが、確かにこのような基準があると便利かもしれません。しかしこのような基準で選定された建材で立てられた建物が本当に住民の不安を解消してくれるのかは不明です。

それにしても西洋人(特に欧州人)の何でも標準化してしまおうとする考えには驚かされます。デンマーク工化大学のファンガー教授が人間の臭気を数値化しようとして、オルフとデシポールという単位を提唱しているようです。一人の成人が排出する臭気を1オルとし、その1/10をデシポールと定義しています。一体どんな物質がどの程度の濃度あれば1オルトなのか興味があります。人種による違いは無いのでしょうか。確かにこのようなことができれば便利かもしれませんが、無理に数値化する必要があるのか、あるいはできるのか、日本人の感覚では考えられないと私は思いますが、皆さんはいかがでしょうか。

さて総ヒノキの住宅とコンクリートの住宅、はたしてpi値はいくつに? はたまた国際的な建築のコンペティションで競われた建物を建設する場合、その建材仕様にpiの規定が盛り込まれるのでしょうか?


(文責:におい工房運営責任者 渡辺)
(2011年10月) 
 
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