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第25回
紙の香りの成分とは?

- 無漂白ペーパーフィルターとコーヒーの味


以前のコラムでコーヒー好きであること、おいしいコーヒーの条件として、コーヒー豆が2,4,6-TCA(トリクロロアニソール)の様な世界最強の異臭物質に汚染されていないことが重要であることを紹介しました。



レギュラーコーヒーを飲み始めたのは今から40年くらい前の高校生の時で、当時はサイフォン式で淹れていました。 今もコーヒーは好きで、1日何杯もレギュラーコーヒーのブラックを楽しんでいます。 コーヒーを淹れる手間を考えると、写真1のペーパードリップが一番手軽です。


しかし、ここで気になるのが紙の香りです。 おいしいコーヒーを考えると、コーヒー以外の香りで邪魔されたくはありません。 抽出に使う水にカルキ臭やカビ臭があるとコーヒーを台無しにしてしまいます。 最近エコや自然(化学的な処理をしない)が尊ばれ、ペーパーフィルターも写真1の様な茶色の無漂白品が主流となりつつあります。 近所のスーパーでも、白色の酸素漂白品は無くなってしまいました。


味にうるさい人は、判るかもしれませんが、無漂白品には紙の香りが残っています。 実際この紙の香りがコーヒーの味に影響するのかをテストしました。


テスト方法は簡単で、写真2の様にインスタントコーヒーにペーパーフィルターの小片を漬け込みます。 温度が70℃程度で1分漬け込み味を評価しました。 結果は、やはり無漂白品が一番まずいというものでした。 飲んだ全員が、コーヒーの味が薄いとか、紙の香りがしてまずいという評価でした。



ではその原因は何か?
紙の原料であるパルプには、リグニンという物質が含まれていて、このリグニンが分解すると、バニリン等の香り物質に変化することが知られています。 コーヒー用ではないのですが、甘い臭いのする無漂白の紙を分析した結果を図1に示しました。



図の様に、バニラの香りの主成分である、バニリン が検出されています。 時々古くなった段ボール箱から甘い香りがしているのは、このバニリンが生成しているからです。

実は、この甘い良い香りのバニリンやその他紙の香りが、コーヒーのコーヒーらしさを弱めてしまうのです。 しかし、酸素漂白品が無臭かというと、残念ながらそうではありません。 熱湯で湯通しして紙の香りの影響を少なくすることが、おいしいコーヒーを飲むための方法かも知れません。

最後に、エコや自然にやさしいということだけで、コーヒーをおいしく飲める酸素漂白フィルターの生産や販売をやめることは無い様に願いたいものです。

(2012年5月)