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コラム > 第33回 農薬の臭いって何?
第33回
農薬の臭いって何?
みなさんに質問です。 農薬の臭いについてですが、その臭いの成分は何でしょう?
農薬その物?
ではなく ・・・ 実は、農薬の臭いの成分は、農薬を希釈している有機溶剤や、農薬の分解生成物あるいは不純物であって、農薬その物の場合は稀なのです。
ベランダで育てた草花や野菜には、アブラムシや温室コナジラミ、ハダニがついてすぐだめになってしまいます。 その時、登場するのが農薬なのですが、これが臭いが強くてやっかいです。
ベランダで農薬を撒くと、直ぐに撒いたことが判り、身内からも苦情が出ます。 最近では、臭いが気にならない農薬も販売されているようなので、一度試してみようと思います。
「スミチオン」や「マラチオン」は安全な農薬で、ベランダの草花にアブラムシや温室コナジラミが発生した時に、我が家でも良く撒くことがあります。 その時、ペンキのシンナーの様な臭いも感じるのですが、明らかに体に悪そうな、嫌な臭いを感じます。
では、いったい何故そう感じるのでしょう。
図1が、マラチオン(マラソン)のGC-MS分析チャートです。
農薬として働く
マラチオン、そしてその希釈溶剤の
キシレン類や
エチルベンゼンが検出されています。 このチャートの中で臭うのは、
キシレン類や
エチルベンゼンで、シンナーの様な臭いがする物質です。
マラチオンそのものは臭いがありません。
では、体に悪そうな嫌な臭いはと、感度を上げて分析してみると、図2の様に
ジメチルジサルファイドが極微量検出されました。
ジメチルジサルファイドは、硫黄系のタクワンの様な嫌な臭いがする閾値の低い物質です。 これが、有機リン系特有の、硫黄の様な農薬臭の原因物質の一つであることが判りました。
人の嗅覚はすばらしく、この様に微妙な異臭も感じ取り、シンナーと農薬の臭いの違いをも嗅ぎ分けているのです。 いつもの様に、人の嗅覚の素晴らしさに驚かされます。
そして、人が臭いに差を感じた時は、必ず臭い物質に差があることをここでも再確認できました。
(2014年8月)