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コラム > 第36回 「異臭分析存亡の危機」を乗り越える
第36回
「異臭分析存亡の危機」を乗り越える
平成最後の年31年の1月の半ば、異臭分析に無くてはならないGC-MSが使えなくなる!?
これでもう、40年も行ってきた異臭分析も最後となるのか。
もう二度と異臭分析が行えないという寂しさのあと、異臭分析から解放されるという初めての感覚を味わった。
何故異臭分析ができなくなるのか、その原因は、GC-MSのキャリアーガスである、 ヘリウム(He)が手に入らなくなるからである。世界的な生産減と、需要の拡大でHeが全く手に入らなくなったのである。
実際、Heが手に入らないので、GC-MSが使えないという分析機関もあるとのことだ。
Heが全く手に入らない場合の選択肢は、二つある。一つは、異臭分析をやめる。もう一つはキャリアーガスをHe以外のガス、たとえば水素や窒素に変えることである。
今異臭分析をやめてしまうことはたぶん絶対にできないので、水素をキャリアーガスに使う方法を徹底的にリサーチした。その結果、今では、家電のように安全な装置があって、水を電気分解し、ピュアな水素が供給できることが判明した。
Heが全く手に入らなくなっても水素を使用することで、一応異臭分析は可能であるが、GC-MSの感度が1/2~1/3に低下することが判明した。現状Heは、発注通りに手に入れることはできないが、手に入れることができている。
であれば、如何に節約するかが、存亡の危機を乗り越えるための最大課題である。
そこで、この課題の解決方法を徹底的にリサーチした。
その結果、単純であるが、分析中だけHeを使い、その他は全て窒素を使うことを考えた。 この考えは、既に分析機器メーカーでは採用されていて、自動的にガスの切り替えが行える装置が市販されていた。
ということで、何時ものようにコストミニマムの手作りで切り替え装置を作成した。
装置はいたってシンプルで、Heと窒素を切り替える三方弁だけがあれば組みあがる。(図1) 三方弁による切り替えの効果は絶大で、取り付け前は、GC-MS4台の使用で1-2か月に1本(7立米)のHeを消費していたのが、取り付け後には、10-12か月に1本の消費で済むという結果となった。(図2)
現状Heの予備が1本あるので、計算上2020年を過ぎても異臭分析は行うことが可能であり、Heの心配はしなくてよくなった。
世界的な規模からみれば、節約は一人で行っても何の効果も生まれない。切り替え装置を使っていないGC-MSユーザーがおられれば、すぐにでも切り替え装置を作成し、He節約の輪に入っていただきたい。グリスレス三方弁とコネクター、合わせても5万円でお釣りがくる程度の出費である。