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第42回
気になる備蓄米「古古米」の香り
日本人にとって、古米や古古米のイメージが非常にネガティブなため、今まで古古米というものを口にした人は少なかったと思います。
しかし、米の価格が高騰し、古古米が低価格で流通するようになると、朝から並んで購入するほどの人気となりました。
あれだけネガティブなイメージの古古米に人が群がり、美味しそうに頬張る姿が報道され、さらに古古米の人気が高まりました。
絶対に食べない派と食べてみてもよい派二人の我が家では、古古米を口にすることは無いと思っていましたが、せっかくなのでこの機会にと、香りの官能評価と分析,そして味の官能評価も行いました。
炊飯前のお米では、やはり香りが違いました。この差は、普通の人が簡単に判別できるレベルであり、古古米で古い食用油の様な臭いや不快な酸臭が感じられました。
炊飯直後の温かいご飯でも、古古米で、弱いですが、炊飯前に感じられた同じ臭いが気になりました。
これ以上米の高騰が続いた時に、「我が家で古古米を購入するのか?」の結論は、絶対食べない派の意見が採用され、「購入することは無い」に決定しました。
炊飯前のお米と、炊飯後のご飯の写真は、図1に示しましたが、ほぼ見分けがつきませんでした。
密封状態で、水とともに加熱したお米の分析結果は、図2に示しました。
図のチャートに示したように、
ヘキサノール:芝生を刈った時に感じる草の様な臭い
ヘキサナール:油が酸化した時に感じる古い食用油の様な臭い
ペンタナール:油が酸化した時に感じる不快な酸臭
などが、令和6年産のお米と比べて、古古米では、10倍程度多く検出されました。
(これらの成分は、糠が酸化して生成した物質で、自ら酸化することでお米の酸化を防いでいます。)
この結果は、密封状態での分析なので、炊飯前のお米の香りと考えてよいと思います。
通常炊飯は、100℃で30分以上加熱されますので、これらの香り成分は、ほとんどが水蒸気とともに減少してゆきます。 したがって、炊飯前のお米より、炊飯後のご飯で、古古米の香りや味が気にならないレベルに減少しているのだと考えられます。
炊飯後のご飯でも、減少しているとはいえ、古古米の香りや味が気になるので、絶対食べない派は、古古米ご飯を食べませんでした。
しかし、この話には、後日談があり、冷蔵庫に1日置いたご飯を、次の日の夕飯として、電子レンジで温めて食べたのですが、区別せず温めた結果、二人とも最後までどちらが古古米か区別できずに最後まで一粒残らず美味しく頂きました。
図1.炊飯後の写真
図2.GC-MSによる分析結果